古代史ライブラリー

古代史日和 ライブラリー

古代史像を記したたくさんの本の中でも、一度は目を通しておいたほうがいいと思われる11冊をご紹介します。

はじめ良ければ、すべて良し!はじめて読んだ古代史本の影響は大きいのでは、ないでしょうか?

 

この中から、あなたが目指す古代史像に合う本を探してみては、いかがですか^^それぞれの先生方は、アプローチも結論も違っています。

ですが「結論が違う」と”all or nothing”に考えると、古代史の参考文献はなくなってしまうかもしれません(苦笑)。

結論は違っても、学者の先生方から学ぶことはたくさんあります。

どこが同じで、どこが違うのか、これらの本を参考にして内容を取捨選択して、そこから自分なりの古代史像を構築していくことに、目標地点があると思ってます。

 

巷(ちまた)に出回っている手軽な古代史本は、これらの先生方の古代史像のどれかの流れにあるものです。

または、それぞれのところをつまみぐいしたり、いいとこどりして、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、ついには読めば読むほど、初心者を混乱させてしまいそうな本も多いのですが……(ノ_・。)

ちょっと難しそうで、購入するのもためらうかもしれませんが、図書館でも借りられますよ!

手にして、サササ~っと、目を通してみませんか?一回で全部を理解しなくても大丈夫です。

 

さあ、古代史探究の扉を開きましょう!

古代史の扉を開くオススメの本~11イレブン~

1.安本美典氏『倭王卑弥呼と天照大御神伝承』(勉誠出版2003年)

<コメント>
「歴史は総合の学である」
が終始一貫の姿勢なのです。

中国・朝鮮・日本の文献、考古学、年代論、神社、動植物、地図、言語学、縄文と弥生、青銅製品の原材料の科学的な分析などのデータも駆使して、総合的に矛盾の少ない、古代史像の解明に挑みます。

 

2.田中卓氏『田中卓著作集1 神話と史実』(図書刊行会1987年)

<コメント>
日本の古典をベースに、考古学、神道祭祀の奥深さに踏み込んで、古代史像解明に挑みます。

膨大な著作は、安価で商業主義的な一般的な古代史本と一線を画し、書店で目にすることは少いのですが、図書館の古代史蔵書の必需品になっています。

第二次大戦敗戦後、『古事記』『日本書紀』を否定する学派に、堂々と対峙して、流されずに己の研究を貫く姿勢は見事だと思います。

 

3.坂本太郎氏『日本歴史の特性』(講談社学術文庫1986年)

<コメント>
日本の天皇家は、第26代継体天皇からでさえ、現存世界最古の王朝になっています。

四方を海に囲まれて、外的の侵入を受けにくく、列島の中央部の高い山脈からは、無数の河川が流れ出します。

四季の豊かな自然と風土に生きてきたのが日本民族なのです。

歴史の普遍性と、日本歴史の特性を考えさせる、歴史を学ぶ者の必読書。

 

4.上田正昭氏『私の日本古代史〈上〉〜天皇とは何者か』(新潮社2012年)
『私の日本古代史〈下〉〜古事記は偽書か』(新潮社2012年)

第二次大戦の敗戦後、『古事記』『日本書紀』を否定し、中国文献に重きをおいての古代史像の構築によって、戦後古代史界を牽引して、主流となってきた京大古代史学派を象徴する書物です。

タイトルからも、その方向性は一目瞭然。

ヒスイ・巨木・海人(あま)などの縄文文化より、稲作・鉄・青銅製品などの「弥生渡来系の文物」に重きを置くのも特徴。

考古学の遺物を、中国文献だけでなく、『古事記』『日本書紀』もプラスして、解釈検討しています。

以前の考古学者であれば、普通に行っていた研究方法でしたが、今となっては、そうした研究方法の最後の研究者になってしまうのでは……?

さらには、日本列島の各地に足を運び、現地情報を確認して、縄文から弥生を経て古墳時代までも、日本列島広域の古代史像の構築に挑みます。

 

『古事記』『日本書紀』などの日本文献は、「先入観をもって考古学遺物をみることになる」との研究姿勢で、日本の古典はごく部分的に利用する程度です。

もっぱら「中国文献」によって、考古学遺物を解釈する、という戦後の一般的な考古学者のスタンスを象徴する書物になっています。

それで「同じデータを見ても全く違う解釈になる」という指摘もあります。

「同じものを見ても、違う解釈をするのは、よくあることではないですか?そこから議論を重ねて、積み上げていくのが大切」

とは、石野博信氏のお言葉を思い出します。

7.大和岩雄氏『新版  信濃古代史考』(大和書房2013年)

地方の視点地方の豪族の大きさを主張します。

つまり、古墳時代のころまでの、大和朝廷を小さくみて、地方豪族と大和朝廷との「連合政権」の時代を長くとらえるのが特徴。

方向性は、京大学派と同じ。

書店の古代史コーナーを席巻する、古田武彦氏の「九州王朝説」と同じ地方豪族の強調があるようです。

8.門脇禎二氏『釆女〜献上された豪族の娘たち』(中央公論社新書1965年)

地方豪族から、大和朝廷に献上された「釆女」に焦点をあてて、采女の登場する文献記述を丹念にたどることで、地方豪族に比べて、天皇家の権力がいかに大きかったか、を主張されています。

大和岩雄氏や古田武彦氏の、天皇家と地方豪族の連合政権という見解の対極をなしています。

9.長澤和俊氏『シルクロード』(講談社学術文庫)

東アジアだけでなく、広くシルクロードや世界広域にまで目をむけて、日本の古代史像を考えるのに、大きな示唆を与えてくれる書物です。

それまで女王の歴史のない、中国や朝鮮が倭国を「女王国」と認知しているのです。

『魏志倭人伝』で、「親魏倭王」の「金印」を下賜された倭国の女王が卑弥呼。

それと時を同じくして、「親魏大月氏王」の「金印」を授受された、西方の大国がクシャン帝国なのです。

シルクロードの東西を行き交った、ヒスイ・ラピスラズリ・絹・鉄など、実地踏査に基づいた考察が、日本の古代史像のヒントになります。

10.谷川健一編『日本の神々〜神社と聖地』全13巻

どこの神社へ行けばいいのかしら?

膨大な全国な神社の中から、各地域ごとに、主要神社の地理・由緒を紹介しています。

ただし神社ごとに、執筆者が違うので、各自の歴史観に左右されるのが難点。

ウィキペディアやネット情報など、神社については、少なくとも2人以上の見解を読んでみた方がいいようです。

 

実は、同じことが、古代史探求全般にいえることで、1人の先生の学説に入り込む前に、反対学説などもぜひ読んでみてから、その上で自分の道を進んだ方が、後悔なく、遠回りをしなくてもすむのではないでしょうか^^

 

最後に、古代史ブログ執筆担当のyurinと、このサイトの運営者kaoriが連載している雑誌を紹介します。

11.雑誌「季刊邪馬台国」(梓書院1979年~)

1979年7月創刊の古代日本の総合雑誌。
初代編集長は、芥川賞作家の野呂邦暢氏。

歴史は万人のものである」をかかげて、プロとアマチュアの橋渡し」を目指してきました。

以後、毎号特集をくみ、今年の7月刊行の「宗像と古代日本」で132号となりました。

専門家の先生方と、古代史探求者たちの投稿原稿で構成されています。

お手軽価格で、最新古代史情報、さらに興味ありそうな特集号のバックナンバー(50号くらいから)を入手できます!

>>「季刊邪馬台国」オンラインショップ

 

「縄文から弥生・人類の進化史」コーナー

先史時代の考古学の発掘成果は目覚ましいものがありますし、科学の進歩は古代史の解明に光を投げかけています。

しかし、客観的とみられるサイエンス分野も、読み込んでいくうちに、サンプル・データの取捨選択やその解釈など、主観的部分も見受けられ、結論もそれぞれ別れていくのは驚くほどです!

そういうことを念頭に置いて向き合った方がいいのではないでしょうか^^

 

篠田謙一氏『日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)』

日本人の起源論として、自然人類学者埴原和郎氏の「縄文人と渡来人の二重構造」をモデルとする、弥生100万人渡来説が、一般的な学説として受け入れられてきました。

ですが遺伝子学の進歩、考古学の発掘成果などにより、二重構造では説明しきれない事象が次々に判明するようです。

そうした状況の中で、揺れ動く科学者の姿がうかがわれます。

2015年版『日本人起源論』より古い書ですが、こちらの方にデータが多く掲載されています。

日本人の形成の縄文、弥生二重構造モデルに反対説です。

長濱浩明氏『日本人ルーツの謎を解く―縄文人は日本人と韓国人の祖先だった!』

科学者の方の文章でも、データの分析や解釈を読んでいるうちに、迷路に入ったように思うことはありませんか?

そうした腑(ふ)に落ちない日本人起源論の問題点を、スッキリわかりやすく解説してあります。

賛同するもしないも、一度は読んでみるべき日本人起源論です。

同じく、日本人の形成の縄文、弥生二重構造モデルに反対説です。

勅使河原彰氏『縄文時代史』2016年度版

縄文時代を知りたい時に、安心して読める座右の書です。

縄文時代に入り込む人にありがちな、思想的な主張は抑制されているので、縄文時代へのアプローチを広く深くしてもらえます。

斎藤成也氏『日本人の源流』2017年度版

最新の核DNAの解析では、東アジアにおける日本列島人の特異性がみられます。

また韓国人にも縄文人のDNAの可能性があり、さらに青森県の人と、出雲(島根県)の人のゲノムはきわめて近いという衝撃データもあります!

その「解釈」を巡っては、科学者の方々も試行錯誤しているようです。

そこで従来の二重構造から、うちなる二重構造説、はたまた三重構造説へと……?

 

科学の世界からの人類起源論は、まだまだ進化途上のようです。

縄文時代を持ち上げるあまり、どうも左翼イデオロギーがかった思考の部分が多いのかしら?と思います。

弥生時代からの、国家統一や天皇制への反動です。

そういうところがありがち、ということを念頭において読んでみると、どの著作も参考にすべきところは大いにあると思います。

瀬川拓郎氏『縄文の思想』2017年度版

『アイヌと縄文』に続いて、アイヌの歴史からの視点が斬新です!

大和政権が「蝦夷」と呼んだ人々と「アイヌ」の違い、縄文時代以後の北海道の人々が歩んだ分かれ道が見えてきます。

アイヌに残された縄文性から、本州の人々が継承した「縄文性」にも気づかされます。

それで弥生時代以降の国家統一の歴史の中にも、縄文性を見い出したら、もっとちがった結論があったかもしれないと、そこは少し残念です。

 

・・・・・・・・

理科系の方々の研究成果からの、日本人起源論は、次々と提出されますが、その全貌に近づくには、まだまだ時間がかかるのかもしれません。

日本人の起源を知るには、現代日本人と縄文人のDNAデータだけでなく、同じように縄文時代の頃の世界広くの人々の古今のデータの比較検討が必要です。

つまり韓国・中国・モンゴル・タイ・中央アジア・北東アジア……の国々の人たちの、古代人と現代人のデータです。

それが集積するには、時間もかかるでしょう。

 

ですから、いつも最新のデータに関心は寄せつつ、その時点でのサンプルとデータの、科学者の方々のそれぞれの解釈である、ということを念頭において、実際には地道な歴史の探究をしていく積み重ねが大切と思います。

 

縄文・土偶のことをもっと知りたいという方は縄文ライブラリーもあわせてご覧ください。

 

(監修:yurin、kaori)

最新スケジュール

メール配信

アーカイブ

最近の記事 おすすめ記事
  1. 七輿山古墳
error: Content is protected !!