こんにちは!しむちゃんナウです。
縄文時代の土偶一族の時期別、地域別の広がりをお話しします。
草創期 | 早期 | 前期 | 中期 | 後期 | 晩期 |
テディベア土偶が知っている一族の写真をピックアップしたので、土偶の歴史の全体を示すことができなくて漏れている一族もあると思います。
また、写真の数が実際の土偶一族の数と比例していないことをご容赦ください。
縄文時代の中期の全体像を捉えるような感じで見ていただき、土偶一族の多様さ・地域別の違いや広がり・時期別の違いなどを理解していただきたいと思います。
これから紹介する一覧表には入れることができなかった素晴らしい土偶がたくさんあります。
テディベア土偶も観賞に行きたいと思いますので、ご存知の方はどんどん情報を古代史日和に寄せていただければうれしいです。
- 古代史日和のTwitterのDM
- メール(kodaishi.biyori@gmail.com)
いただいた情報をもとに、土偶一族の一覧表をもっと充実させたいと思っています。
目次
縄文中期の土偶
縄文時代の中期、地域別に土偶一族をまとめるとこのような感じです。
- 時期:中期
- 地域:北海道・北東北、南東北、関東、中部高地、北陸、東海、西日本
<時期別地域別土偶一族繁栄図>
中期は土偶の数が一気に増えてきます。
中期は1,000年弱ですが、土偶の数は32%もあります。
美しい土偶も誕生
顔面や手足の表現が出てきて、ビーナスや女神・ミスと呼ばれるような立派で美しい土偶も誕生します。
縄文の女神 | |
丘陵(おか)のビーナス | |
縄文のビーナス | |
ミス馬高 |
北東北地方の土偶
北東北地方では、一見板状に見える土偶が徐々に厚みを持ち、何とか立たせようとする努力が伺えます。
もう少し大きい画像で、縦にして見てみます。
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縄文の女神のフォルム
立像化と言えば、原田昌幸先生が「縄文の女神もフォルムの中心は逆三角形の板状土偶で、それを何とか立たせるためのがっしりした両脚」とおっしゃっていたのが印象的でした。
長野県 深沢遺跡の中空土偶
長野県飯山市深沢遺跡では大型化・自立化のために土器と同じように粘土紐を積み上げる中空土偶への試みがありました。
同じころ隣の新潟県でも同様の中空土偶が津南町上野遺跡・北林C遺跡、上越市長峰遺跡・和泉A遺跡に出土します。
長野県の見事な線刻表現の土偶
長野県坂上遺跡の土偶(始祖女神像と呼ばれる)の体の細かい線刻表現は本当に見事です。
レプリカを作るのが大変だったそうです。
現代人にもまねのできそうもないこういう表現力に注目されます。
日本海を通じて交流?
青森県深浦町出身 弘前市の西方、日本海沿い |
新潟県阿賀野市出身 |
- 仮面をかぶったような顔
- 開いた両腕
- 粘土粒を張り付けたような乳房と臍
- 体表面の刺突文様
- 下半身なく、置かれるような立像
青森県と新潟県の土偶ですが、日本海を通じて人々が交流したのでしょうか。
国宝 縄文のビーナス
「縄文のビーナス」に似た土偶が、長野県立歴史館の「中部高地の土偶展」に集合しました。
長野:平出遺跡 | |
長野:棚畑遺跡 ビーナスのお姉さん? |
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山梨:寺所第2遺跡 | |
山梨:鋳物師屋遺跡 | |
山梨:宮之上遺跡 |
中部高地(長野県~山梨県)に広がった土偶形式、表現のようです。
その中で、「縄文のビーナス」は特別な存在!
国宝 縄文の女神
「縄文の女神」(西ノ前遺跡:山形県最上郡舟形町)より少し早い時期の原形のような土偶が宮城県中ノ内遺跡から出土しています。
宮城:中ノ内遺跡 |
「縄文の女神」は現存土偶の中で一番長身ですが、中ノ内遺跡の土偶は小柄なようです。
ポーズ土偶の出現
生活の仕草を表わす(ポーズ)土偶も出現します。
長野:目切(めきり)遺跡(市立岡谷美術考古館) | |
長野:花上寺(かじょうじ)遺跡(市立岡谷美術考古館蔵) | |
長野:広畑(ひろはた)遺跡(市立岡谷美術考古館蔵) | |
山梨:鋳物師屋(いもじや)遺跡(南アルプス市教育委員会蔵) | |
山梨:宮之上(みやのうえ)遺跡(市甲州市教育委員会蔵) |
岐阜県の土偶
岐阜県は古くから東日本・西日本、日本海側・太平洋側各地からの交流の接点、日本の中心。
それゆえ周囲の各地域からの影響が土偶の表現形式にも表れます。
岐阜:岩垣内(いわがいと)遺跡(岐阜県埋蔵文化財センター蔵)
岐阜:堂の上(どうのそら)遺跡(高山市教育委員会蔵) |
岩手県の刺突文様の土偶
すごく鮮明な画像を送っていただけたので、ぜひ拡大して見て下さい。
縄文人の細やかな刺突(しとつ)紋様など製作技術がわかります。
岩手:塩ヶ森(しおがもり)遺跡(岩手県埋蔵文化財センター蔵)
顔の部分を拡大して見ました。
小さい孔が3つあいているのは、前期の糠塚遺跡の土偶に似ていますが、眉上丘や鼻を盛り上げていて、後の土偶の特徴的な顔面表現に繋がっていくように思えます。
宮城:糠塚(ぬかづか)遺跡(東北歴史博物館蔵「日本の美術No.526」第17図) |
カッパ土偶とその地域
私たちは幼いころから伝説や昔話で想像上の動物「河童」に親しんでいました。
土偶の頭頂部が平坦か凹んでいて河童の皿を思い浮かべる土偶が「カッパ形土偶」と呼ばれます。
カッパ形土偶は、新潟県を含む北陸を中心に、関東地方西部、中部高地、東北地方南部という広範囲に見られます。(新潟県立歴史博物館『発掘された新潟の歴史2011 にいがたの土偶』より)
カッパ形土偶の親戚を見て見ましょう。
新潟県長岡市:馬高遺跡 ミス馬高 |
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ミス馬高を上から見た図 |
新潟県糸魚川市:長者ヶ原遺跡
富山県:長山タイプ(長山遺跡)
長野県:棚畑タイプ(縄文のビーナス)
山形県:西ノ前タイプ(縄文の女神)
背面人体文(はいめんじんたいもん)土偶
多摩ニュータウン遺跡の土偶に集合していただきました。女性の妊婦さんですね。
何とも言えない怪しげな表情です。
丘陵(おか)のビーナスや他の地域の土偶とちょっと違うかも。
10cmくらいの小振りな土偶ですが、体表面の鋭い線刻紋様が不思議さを倍増させ、目を引き付けられます。
多くはひざまずいているようで、両手を軽く上方に広げて何かを祈っているようです。
これらは、「背面人体文土偶」と呼ばれています。
海外出張した土偶を紹介
私たち(前期~中期)も2009年の英国大英博物館「THE POWER OF DOGU」に海外出張しました!!
山梨:釈迦堂遺跡(釈迦堂遺跡博物館蔵) | |
青森:三内丸山(三内丸山遺跡センター蔵) | |
山形:西ノ前(山形県立博物館蔵) | |
長野:棚畑遺跡(尖石縄文考古館蔵) |
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長野:姥ヶ沢(うばがさわ)遺跡(中野市立博物館蔵) | |
長野:目切(めきり)遺跡(市立岡谷美術考古館) | |
山梨:鋳物師屋(いもじや)遺跡(南アルプス市教育委員会蔵) |
このブログのまとめ
今回は、縄文時代の中期の土偶についてお伝えしました。
- 中期の土偶の数は32%もある
- ビーナスや女神など呼ばれるような美しい土偶の誕生
- 一見板状に見える土偶が徐々に厚みを持つ(北東北地方)
- 縄文の女神もフォルムの中心は逆三角形の板状土偶
- 縄文のビーナスは中部高地(長野県~山梨県)に広がった土偶形式
- 生活の仕草を表わす(ポーズ)土偶も出現
- 線刻表現や刺突文様が見事な土偶も出現
中期末頃、急激な寒冷化で土偶は一斉に姿を消し、土偶存亡の危機を迎えます。
その時、細々と生き延びたのは、青森県深浦町一本松遺跡の土偶の一族。
やがて後期になり気候が戻ると土偶は復活し、また繁栄を迎えます。
中期では、西日本で土偶がほとんど見かけられなくなるのが、大きなミステリーです。
縄文中期末の土偶消滅の危機はどうなったのか?
次の時期、縄文後期に参りましょう!
縄文ライブラリーに縄文・土偶の参考文献を紹介しています。
土偶について興味のある方はあわせてご覧くださいね。
写真掲載*Special Thanks
第4話で写真掲載をお許しいただいた皆様です。ありがとうございます。
<筆者撮影写真の掲載を許可いただきました>
時期 | 都道府県 | 遺跡名 | 所蔵先 |
中期 | 青森県 | 三内丸山 | 三内丸山遺跡センター |
中期 | 秋田県 | 伊勢堂岱 | 北秋田市教育委員会・伊勢堂岱縄文館 |
中期 | 山形県 | 西ノ前 | 山形県立博物館 |
中期 | 東京都 | 多摩ニュータウン471 | 東京都埋蔵文化財センター |
中期 | 東京都 | 多摩ニュータウン | 東京都埋蔵文化財センター |
中期 | 神奈川県 | 公田ジョウロ塚 | 神奈川県立歴史博物館 |
中期 | 長野県 | 棚畑 | 尖石縄文考古館 |
中期 | 長野県 | 深沢 | 飯山市ふるさと館 |
中期 | 長野県 | 姥ヶ沢 | 中野市立博物館 |
中期 | 長野県 | 坂上 | 井戸尻考古館 |
中期 | 長野県 | 古屋敷 | 東御市教育委員会 |
中期 | 長野県 | 目切 | 市立岡谷美術考古館 |
中期 | 長野県 | 平出 | 平出博物館 |
中期 | 山梨県 | 寺所 | 北杜市教育委員会・北杜市考古資料館 |
中期 | 山梨県 | 鋳物師屋 | 南アルプス市教育委員会 |
中期 | 山梨県 | 宮之上 | 甲州市教育委員会 |
中期 | 新潟県 | 馬高 | (長岡市)馬高縄文館 |
<所蔵画像を提供していただいた皆様>
時期 | 都道府県 | 遺跡名 | 所蔵先 |
中期 | 青森県 | 一本松 | 深浦町教育委員会 |
中期 | 岩手県 | 塩ヶ森 | 岩手県埋蔵文化財センター |
中期 | 新潟県 | 長者ヶ原 | 東京国立博物館 |
中期 | 山梨県 | 宮之上 | 甲州市教育委員会 |
中期 | 新潟県 | 馬高 | (長岡市)馬高縄文館 |
<撮影写真の転載をお許しいただきました>
- 出版社:株式会社ぎょうせい
- 書籍名:「日本の美術」No.526 土偶とその周辺Ⅰ
番号 | 時期 | 都道府県 | 遺跡名 | 所蔵先 |
第17図 | 中期 | 宮城県 | 中ノ内A | 東北歴史博物館 |
第101図 | 中期 | 新潟県 | ツベタ | 阿賀野市教育委員会 |