里中満智子先生を囲んで「大国主命の妻たちのサミット」【2】

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里中満智子先生を囲んで「大国主命の妻たちのサミット」【1】のつづきです。

地域間の古典の情報交換によって古代史の道筋は見えてくる

大国主命の妻となった、日本海沿岸の女神たちは、後世に長く、その伝承とともに地元の人々の信仰や崇敬を集めてきたとがわかってきます。

このような地域を越えて、日本列島の各地の『古事記』『日本書紀』の伝承・旧跡の情報を交換することによってこそ、古典の理解は深まり、古代史像も結ばれると確信できました。

 

中国の文献の『魏志倭人伝』では、中国の人にとって必要な情報しか記されていません。

それで、いくら読んでも日本海や東国の情報は希薄なのです。

女神も「卑弥呼」「台与」くらいしかわからず、主な国名も「邪馬台国」「狗奴国」くらいです。

 

一方、日本の古典の古事記』『日本書紀』を丹念に読み解いていくと、日本海や東国方面の情報が豊富に記されているのです。

100を越える国々の名もわかってきます。

『風土記』『先代旧事本紀』『古語拾遺』『万葉集』『高橋氏文』などの他の上代古典と補い合って、豊富な古代史情報が得られるのです。

さらに延喜式』神名帳の神社や、地元の神社や古墳伝承からも、いっそう深く古代史像が描かれてきます。

 

今年の7月には『季刊邪馬台国』「宗像と古代日本」の特集号で、このシンポジウムの一部を取り入れた一文が掲載されましたので、ご興味のある方はご笑読くださいね。

>>季刊邪馬台国132号

また、シンポジウム主催者の落合久美さんは、『季刊邪馬台国』133号で八上姫について書いていらっしゃいます。

>>季刊邪馬台国133号

ご興味のある方は、お読みいただければ嬉しく思います。

八上姫への熱い思いもって、研究を続けていらっしゃる女性です。

里中先生と少女時代の思い出

話は前後しますが、里中先生をホテルから、昼食の会場までご案内する役をおおせつかり、先生とお話しする機会ができました。ラッキー!


シンポジウム開催地 河原町

人生長くやっているとこんな時もあるのね、とお会いしてすぐに感激して涙ぐんでしまったのです(微笑)。

シンポジウムの司会ご担当の山中先生に、ついそのことをお話したところ、

「志村先生は、里中先生にお目に書かれて、感激して涙ぐんでしまったそうです。それほど女性たちの憧れの先生でなんですね。」

と、始まりに話されました。

千載一隅の機会なので、その思いをはっきり申し上げるようと思いまして、少女時代に感銘して、今も心に浮かぶあれこれを申し上げたのです。

 

「瀬を早み 岩にせかかる滝川の われても末に 逢わんとぞ思う」の百人一首を、作品の中で知って、大切な人との別れの時に、いつも思う歌になっています。

『アリエスの乙女たち』で、男性には二つの愛のあり方がある、ということにとてもナットクさせられました。
 
隆(たかし)は「本当に愛しているから、苦労させたくない」で、司(つかさ)は「本当に愛しているから、一緒に苦労してほしい」って、どちらもいいなあ、と思いました。

すると里中先生が、

「『アリエスの乙女たち』がテレビになった時、PTAからクレームがきたんです。」

と。

「えっ、そうなんですか!」実に驚きました!

 

「紅茶はアールグレー、日本茶は正喜撰(しょきせん)と、なんてオシャレ!と思いました。飲んだこともなかったですから(汗)」

「アールグレーそんなに好きでもないんですよ!」

とは驚きでした。長年、アールグレーというと里中先生が浮かんだので。

「お豆腐が崩れて、マーボー豆腐作る、というのですが、まだマーボー豆腐を食べたことなかったです(汗)」

微笑んで聞いてくださりながら、

「あの頃は、連載をたくさんかかえて大変だったんです。徹夜も続いて、ようやく明け方に書き上げて、朦朧として公園を歩いたら、警察の人に職務質問を受けたりしました。……そしてついに倒れました……」

 

里中先生は、過酷な状況の中で、あのようなワクワクさせてもらえる漫画を、私たちのために描いていたのだなあ、と初めて知ったのでした(拝)

『天上の虹』で、多品治(おおのほんじ)の子の安万侶が、大津皇子の子として、大伯皇女(おおくのひめみこ)の前に現れた時に、涙がとまらなかったです。

「あれもいろいろ言われましたが、作品として読んでいただければと思って書きました。」

あのような描き方をしてくださり、溜飲が下がるような感動がありました。

持統天皇を書くことにしたときのいきさつなどもお話ししてくださり、本当に楽しい心に残るひとときを過ごさせていただきました。

 

里中先生を囲んでの懇親会

シンポジウムの後は、平井鳥取県知事ご夫妻とともに、夕食の懇親会がありました。


※写真はイメージです

里中先生の人を飽きさせない話題の豊富さや心配りに、ますます魅了されます。

SNS社会とどう向き合うかなど、平井知事も、里中先生も有名人なだけに、苦い体験からのお話しもありがたかったです。

あっという間の時間でした。

もしかしたら里中先生は邪馬台国畿内説で、私の九州説とは、全く違うのかもしれません。

話題にもならなかったですが、それはほんの小さい問題のようにも思えてきます。

古典に登場する人物を丹念に読み解いて、その感情までおよんで、深く掘り下げる、その姿勢にこそ共感するのです。

 

それはやみくもにひたすら想像をめぐらすのでなく、『古事記』『日本書紀』に淡々と記されるできごとや人物を、『万葉集』という人々の心情に入り込んだ歌を読み解くという丹念な作業によってなされるものです。

 

さらに先人の解釈の文献や、フィールドワークによって裏打ちされたもので、五感を駆使して思いをめぐらし、漫画家としてのロマンも込めたものです。

そうした大変な過程を経てこそ、私たちの心にそれぞれの人物像が深く心に染み入ってくるのだと思います。

歴史や古典へのモチベーションを、限りなく高めてくださる里中先生へ、心から敬意を表します。

一緒に参加させていただいた女性講師陣のために、お手製の勾玉の首飾りを頂戴しました。

一生の宝物です(拝)

鳥取駅前で女子カフェ会

里中先生をお見送りして、その後はさらに女性ならではカフェ会が続きました。

まだまだ夢は続きます。

私はちょうど参加者の中ほどの年齢で、大先輩とお若い方の双方からのご経験を交えて、女性ならではの話しもはずみました。

 

皆さん、それぞれ順風満帆なことばかりでないことにも、共感できて励みになりました。

それぞれ遠く離れた地域に住んでいるのが残念ですが、ひとときのめぐりあいが、かけがえない時間となったと感謝しております。

主催者の落合さん、よくぞこうしたシンポジウムを企画実行されました。

実は、私も『先代旧事本紀』『景行天皇と日本武尊』を刊行して、その後、目標達成した虚脱感と、わけのわからない忙しさの中で、行く先が見えない、迷路に入り込んだような日々でした(大汗)

そういう時だからこそ、ふとほのぼのとした少女時代を蘇らせてくださった里中先生と、お目にかかれて、涙が湧いてしまったのかもしれないです。

 

古典に書かれた人物たちは、フィールドワークするほどに実在性はますばかりですし、心情まで偲ばれてくるのです。

九州から、あるいは畿内からはるばる遠方へ遠征した皇族たち、いったいどんな気持ちだったのかしら?と。

古典の登場人物のひとりひとりを大切に探究していきたいもの、と改めて思いました。

そこにこそ歴史の面白さが湧いてきます。

 

日本画家の日香浬先生とは、伯備線と新幹線を乗り継いで、東京まできてお見送りしました。

日香浬先生と今回のような経験をさせていただいことこそ、夢のようです。

自分の講演の順番まで緊張して、他の講師の先生のお話しを聞きそびれたところもあるほどでした。

むしろお若い日香浬先生に励まされて、心強かったのです。

鳥取名産の、多種類のとうふちくわを肴に、お酒が美味しく、車中でのよもやま話をしているうち、あっという間に東京についてしまいました。

シンポジウムを通じて、里中先生、女性講師の方々の触れ合いから、新たな力がわいてくるのでした。

大国主命とその妻たちゆかりの写真

最後に、大国主命の妻たちゆかりの場所の写真を紹介しますね。

出雲:須勢理姫

出雲大社本殿の端垣内に須勢理姫を祭る御向社がある

正式名称は「玉端内本殿の敷地の大神大后社(御向社)」

因幡:八上姫

八上姫像

白莵(はくと)神社にて


白兎神社(鳥取市)

因幡の白うさぎの舞台

白兎海岸(鳥取市)

 


八上姫神社の森(右)と曳田川(鳥取市)

越:奴奈川姫

大国主命と建御名方命を抱く奴奈川姫

居多神社(新潟県上越市)

大己貴命(大国主命)をお祭りする能登国一宮

気多大社(石川県羽咋市)

奴奈川姫をお祭りする越後国一宮

奴奈川神社(新潟県糸魚川市一宮)


奴奈川神社(新潟県糸魚川市田伏)

宗像:田心姫

田心姫イメージ

藤原新也氏「沖ノ島写真展」より

宗像三女神が降臨した山

六ヶ岳(福岡県宮若市)

田心姫を祭る第三宮

宗像大社

宗像三女神と大国主命の伝承を伝える

英彦山神宮(福岡県)

田心姫、宗像・沖ノ島に関する写真はこちらも合わせてご覧ください。

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